10年前なら理解不能『ピアニスト』

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ハネケの映画『ピアニスト』を見て、個人的に久々のヒットだったわけですが、その思いを記事にしようと。でも、やはり一般受けする映画ではないし、どうやって紹介しようか。なんて事を考えながら、その思考過程を記事にした方が面白いんではないかとも思いつつ、とりあえず書き出したので、要はまとまりのないレビューです。

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映画や芸術って出会うタイミングが大事で、たぶん10年前に見ても、さっぱり訳分からん映画でツマンネってなってた。監督の意図に少しでも近づきたいとネットの映画レビューはよく見るけど、 みんな凄い知識だなと勉強になるばかりだが、やはりその人が感じたことを素直に表現してるレビューが一番好き。

 

さておき『ピアニスト』は、やや見る人を選ぶ映画で、芸術的な、というかアカデミックな要素と、そこから発生する精神やジェンダーのバランス崩壊→歪んだ性と、そこを一口に変態的だと切ってしまうと、ただの変態映画となる。

主人公エリカはアラフォー中年女性で、ウィーンの音楽院でピアノ教授という肩書。クラシックを未来に繋いでいく使命までも担うレベルの、とても厳しい学校。社会的には誰からも尊敬されるポジションだが、当然ながら、その代償に多くのものを犠牲にしてきた。

彼女は喜怒哀楽のない冷たい顔つきで、生徒にはサディスティックなまでに厳しい。厳しさは生徒のためになるので許されるわけだが、恐らくストレス発散もしてそう。

そんな彼女のキャラクターに少しでも共感できるかどうかが、この映画を楽しめるかのポイントとなる。この映画はエリカの心の話。

 

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彼女に深い繋がりを感じるイケメンがでてくるが、手も触っていないような状況から、トイレに入った彼女を追いかけ、個室によじ登り内側から鍵を開け、彼女にキスする。

ストーカー並の強引なアプローチだが、ピアノを通じて互いは疎通しており、鉄仮面の彼女の本心も見抜いているので、確かに精神レベルは同等といえる。トイレの中だが美しいシーンで、DVDのジャケットになってるのは頷ける。

 

ここから彼女の性癖に振り回される後半となるが、彼女が、なぜそうなってしまったのか。厳しい母の教育か、精神を病む父の血か、ピアニストとして、あらゆる作曲家の思想を飲み込んだ為か。シューベルトやベートーヴェンなど作曲家の多くは男性だが、男性的な考えを女性が取り込んだら精神的・性的にどうなるのか。

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そういった部分に真摯にスポットを当ててる映画で、エリカのような立場は社会的に少数派だからこそ変質的な性癖も不思議ではなく、その人達には強力なエールにもなりえる。衝撃のラストと無音のスタッフロールは、彼女の強烈な思いを想像する時間になる。

 

 

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