クリス・マルケルの1962年のフランス映画。28分と短いが後世に与えた影響は大きく、テリー・ギリアムの12モンキーズや、押井守作品に影響を与えたようで、攻殻機動隊のバトーのようなキャラも登場する。
映像は白黒で紙芝居のようにスチール写真が切り替わっていく。 最初は予算的な都合かなと安っぽく感じたが、それぞれの写真の美しさに加え、一度だけ動くシーンが出てくるので、その為の演出だと分かり好印象に変わる。
白黒スチールの連続でありながら、心音や環境音などの心理的効果の強い音楽によって引き込まれる。今や珍しくないストーリーではあるが、これが元祖と考えれば衝撃的という他なく、写真はそれぞれが芸術的で美しい。宝石のような28分だった。
ストーリー
ネタバレ全開です。タイムトラベルを軸にしたストーリー。幼少の頃に主人公が空港に訪れた時、ある女性と、男性が倒れる記憶が根強く残る。その後世界は核戦争により消滅。放射能により地下にしか住めなくなる。
世界を復元しようと科学者はタイムトラベル装置を開発。過去や未来に行き世界を救う技術を得るのが目的だが、被験者への負担が大きく、とりあえず過去に行くテストを繰り返す。想像力の強い主人公が次の実験台に選ばれる。
テストを繰り返すうち、あの空港の女性と恋に落ちる。過去の世界は美しく輝いている。人工的な鳥のさえずりの中(気づきにくいがトランス的な没頭感がある)、一瞬だけ動画で彼女がまばたくシーンが。
テストは終了。いよいよ未来人から世界を救う技術をもらう。実験は成功した。用無しとなった主人公は、現実よりも過去に生きていたいので、タイムトラベル装置で過去に逃亡する。
思い出の空港に戻るが、科学者につけられており逃亡の罰で殺される。記憶の中の倒れた男は自分だったのだ。
白黒映画の中に一部カラーを挿入して印象を高めるテクニックは、天国と地獄、トップをねらえ!、シンドラーのリストなどで見ていたが、静止画の中に一部だけ動画を挿入するテクニックを用いた映画は初めてだった。
力強いスチルに加え、音楽や効果音も強烈。濃縮された映画でした。