ヘッドホンセレクターが欲しくて探してみたんですが、あまり需要がないのか、そういう商品自体あまり販売されていないみたい。一つ中華製のを買ってみましたが、グランドループと高周波ノイズが発生して私の用途には耐えませんでした。
というわけで3.5mmステレオミニプラグのセレクターを自作します。ハンダゴテさえ使えれば難しい工作ではなさそう。でも自作となると外観のデザインが安っぽくなりがちなので、「見た目もできるだけかっこよく!」がコンセプトです。
材料
パーツはネット通販と地元の店舗でバラバラに買いました。特にケースは実物を見たかったので実店舗にてチェック。トータル4,000円ちょっとは安くついたのではないでしょうか。
商品名 | 金額 | |
ケース | タカチ電機 UC14-4-10DD | 1,762円 |
ツマミ | サトーパーツ K-12 | 563円 |
セレクター | アルプス電気 SRRN142100 | 450円 |
ジャック | マル信無線 MJ-073H | 100×6=600円 |
ケーブル | BELDEN 8503-01-5 | 800円 |
合計 | 4,175円 |
【ケース】タカチ電機 UC14-4-10DD
見た目はほぼケースで決まります。色々なケースと比較してUC14-4-10DD(140x40x10)に決まり。もう少し小さなサイズでも良かったんですが、作業のしやすさ的にも丁度よいサイズでした。
【ツマミ】サトーパーツ K-12
ケースにあう大きさ&SRRN142100と適合するサイズということで、ほぼ消去法的に決まりました。SRRN142100の操作部は長さ20mmなので、平らなツマミだとツマミが浮いてしまいますが、K-12の穴の深さは17mmなのでSRRN142100とピッタリです。
【ロータリースイッチ】アルプス電気 SRRN142100
ヘッドホンセレクターの要になるパーツです。3回路4接点ノンショーティング式。ヘッドホンプラグは3極(TRS)だし、切り替え数は4つで丁度いいです。『ヘッドホンセレクター 製作』でググってみるとSRRN142100が定番のようです。
ロータリースイッチの役割
くるくる回して接続を切り替えるパーツ。『3回路4接点』の意味は、3つの回路(今回の場合は左、右、GNDの3つ)を、4接点(4つ接続できる)という意味。切り替え4つと出力があるので、3回路4接点の端子数は3×(4+1)=15となる。アルプス電気のロータリースイッチが人気の理由の一つに、回したときの感触があるらしい。実際、回し心地は「コクッ」として気持ち良い。
ノンショーティング式とは、スイッチを切り替える際に、一旦回路が完全に切り離されてから次の回路に接続される。一方ショーティング式だと、スイッチを切り替える際に、両方に接続される瞬間が存在する。ショーティング式は、たとえば音量ボリュームのように隣の回路と信号が類似している場合に、両方に接続される瞬間があることでスムースな繋がりが実現できる場合があるが、今回は隣の信号は保証されていないため、切り替える際にショートさせる必要がないので、ノンショーティングタイプを使う。
【ジャック】マル信無線 MJ-073H
パネル取り付けで絶縁タイプの3.5mmステレオミニジャック。デザイン的にナットが金属製のMJ-074Nが良かったんですが、MJ-074Nは非絶縁タイプなので他の接続とグランドループが起きる可能性があって諦めました。
グランドループとは?
別名アースループ。ノイズの発生源となる現象。今回、中華製セレクターで発生したグランドループを例として説明する。中華製セレクターには、Macのオーディオ出力と、MacとUSB接続したMojoのオーディオ出力を繋いだ。すると中華製セレクターの出力からはハムノイズが発生した。本来はセレクター側のGNDを共通しても工学的には問題ないが、他機器との干渉まで考慮した際に、グランドループのような状況が発生する場合がある。AMラジオ用のループアンテナのように、電線はループするとループ内を通る磁束により電流が発生するので、グランドループはノイズの原因になる。
ところでヘッドホンプラグは3極(TRS)だが、これも左右のグランドを共有している仕様のため、相互に音が干渉するクロストークという現象が発生する。この現象を避けるために、グランドを左右別に設けるバランス駆動ヘッドホンというのが存在する。グランドの共有によるノイズは、ヘッドホンプラグの標準規格にさえ存在しているので、オーディオ機器の品質はまさに個々人がどこまで求めるか?という事になる。
【ケーブル】BELDEN 8503-01-5
業界標準のベルデンケーブル、1m×5色入り。今回の工作はケーブルの長さも短く、ケーブルの影響は少ないとは思いますが、せっかく作るので安心を買う意味でも。
使った工具
はんだごて
私が使ったはんだごては、アマゾンで買った『Anbes はんだごてセット』。安かったし特に不満もないです。こて台はあったほうがいいと思います。
テスター
結線箇所が多いのでテスターで確認しながら作業するべき。テスターはこちらの記事でも紹介しています。
AstroAI テスター デジタルマルチメーター
テーパーリーマー
ドリルかルーターで3mmの穴を開けてから、テーパーリーマーで穴を拡張します。
ミニルーター
ルーターかドリルで穴をあけます。細かな作業ができる分、今回はドリルよりルーターが向いてるかも。テーパーリーマーで拡張するには最低3mmの穴を開ける必要があるので、金属に3mmの穴が開けられるビットが必要です。
ドライバードリル
私は今回ドリルで穴を開けました。ちなみにドリルは有線の方が何かと便利。
設計
ケースに開ける穴の位置を決めます。背面の4つのジャックをインプット、前面2つをアウトプットとしました。これでMJ-073Hの穴が6つ。さらに前面中心にSRRN142100の操作部と回転止めの穴。合計8つの穴を開けることになります。アウトプットの2つのジャックは並列分岐させます。
穴あけ
UC14-4-10DDのパネルは片面のみ保護シートがついているので、そこへ穴を開ける場所を描き込みます。
穴あけ場所は外周から求めるよりも、最初にパネル中心を求め、そこから測って描き込みました。外周から計算するのを避けた理由は、UC14-4-10DDのパネル部分のサイズは、パネルがはめ込み式のため、140×40より3mm小さい137×37なので、計算がやや複雑になるためです。よってセンター合わせとしました。
穴あけ作業は、最初に3mmの穴をドライバードリルで開けて、その後、テーパーリーマーでグリグリと穴を広げました。SRRN142100の回転止めの穴のみ、ドライバードリルで2mmの穴を開けてから、ミニルーターで微調整しながら3mmまで削りました。なのでちょっと楕円になってますね。
テーパーリーマーはバリが出ますが、テーパーリーマーを斜めにすればバリを削れます。失敗が許されないので、じっくりコツコツと作業するのがポイントです。
穴が開いたら、最後に保護シートを剥がして完成です。
配線
MJ-073Hは配線前にパネルに取り付ける必要があります。ケーブル色は、左チャンネル用を白、右チャンネル赤、アース黒としました。ケーブル長は、背面のインプット用12本は12cm、全面アウトプット用6本は10cm、合計18本用意しておきます。
つぎにSRRN142100にケーブルを半田付けしていきます。
写真は正面から見たSRRN142100で、セレクターを一番左にまわした時に1番(正面から見て一番左のインプット端子としました)が有効になります。アウトプット端子は並列分岐させるので、2つのケーブルを半田付けします。
SRRN142100への配線が全て終わったら、SRRN142100を本体に取付け、最後にMJ-073Hとケーブルを繋げます。MJ-073Hはアースが下側にくるように取り付けれれば、右側がRing(赤)、左側がTip(白)と左右そのままになるので直感的です。
完成
できた!
使用感
中華製セレクターで感じたようなノイズは全くありません。GND含む3点切り替えなので、他のジャックと物理的に接点が無いのは気持ち的にも安心です。
ただアンプの電源を入れっぱなしで切り替えるとパチッとノイズが入ります。私はそれほど気になりませんが、ボリュームによってはノイズも大きくなるでしょうし、基本はアンプの電源かボリュームを落としてから切り替えでしょうか。
この件で調べてみると、原因はノンショーティング式セレクターは一瞬信号が途切れるためのようです。だからショーティング式のセレクターなら大丈夫という情報も見かけましたが、切り替え先の信号は約束されない状況なので、トータルでみてノンショーティング式の方がリスクが少ないかなと思います。自己責任ですね。