なぜいま中華アンプが熱いのか
数年前からオーディオ界隈で盛り上がりをみせている中華アンプ。中華アンプは数千円という価格帯なのに、従来の10〜20万円といった高級アンプにも負けないほど高音質らしい。家で眠っていた古い大型スピーカーが大化けしたというレビューがいくつも上がっている。つまり20年前の高級アンプを凌駕する性能との噂。古いアンプを現役で使っている人にも気になる情報です。
そもそも中華アンプは従来のアナログアンプとは異なりデジタル方式で増幅する。これはD級デジタルアンプと呼ばれ、デジタルなので回路が簡略化できる。つまりアナログアンプに比べ部品点数を減らせるし、シンプルな回路はそのまま高音質化に繋がる。
今までオーディオというと、いい音には高級アンプが必要という図式だった。それがここにきて数千円で数十万のアンプと同レベルに高音質となると、今まで高級アンプを購入してきたユーザーとしては面白くない。従来のオーディオメーカーがそんなシガラミを抱えるなか、その隙間を突いたのが中華アンプ市場といえそうだ。
中華デジタルアンプの特徴
中華アンプの特徴をまとめてみると、
- 低コストでかつ高出力が可能
- デジタル方式なのでノイズが少なくクリアな音質
- アナログ回路とは異なり入力はそのまま増幅されるのでフラットな音(味付けがない)
- 小型、軽量で省電力
特徴をまとめるとデジタルアンプはまさに理想的なアンプと言える。一方で従来のアナログアンプといえば、重い=音が良いというくらい巨大で重量があった。そもそもアンプで綺麗な音を出すには綺麗な電源を作る必要がある。そのためには巨大なトランスが必要で、その熱対策にはこれまた巨大な放熱板も必要になる。それに増幅回路そのものはシンプルであっても、低ノイズのためにはスペース的にゆとりを持った回路設計が望ましく、アンプのサイズはどうしても巨大になる。
反面、デジタルアンプで扱う信号は0と1のみ。しかも回路はすでにICチップ化されており、中華アンプの中身は極めてシンプル。アナログノイズ対策は出力一歩手前の限られた範囲で済むようだ。
国産のデジタルアンプはないのか
そんな沢山のメリットがあるデジタルアンプ。実はすでに多くの国産機種で採用されている。近年、とても売れている『DENON PMA-60』をはじめ、過去にも『KENWOOD R-K1000』『Panasonic SA-XR10』などさまざまな機種に採用されてきた。それに2012年1月発売のstereo誌には 、LUXMANが設計監修した『LUXMAN LXA-OT1』が付録でついた。D級アンプはコストが抑えられるので、比較的安価な製品に採用される事が多いようだ。
それでも中華アンプに注目が集まるのは、『Tripath製 TA2024』『STマイクロエレクトロニクス製 TDA7498』といった世界的に評判が高いチップを採用しており、それを数千円といった価格帯でシンプルに楽しめるからだ。
実際の所どうなのか?
私も実際にいくつかの中華アンプを購入してみたが、とりあえず『SMSL SA-98E』について。スピーカーに繋げて最初の数時間は、解像度は高いものの、音が固く低音も貧弱な印象。その後エージングが進んだせいか音も安定してくる。なるほど解像度がたしかに高く、特にシンバルなどの高音はシャンシャンと元気良く鳴る。パワーも申し分ない。全域に渡りフラットで音の味付けがなく、音楽全体が平等に見渡せるといった感じ。とにかく解像度とパワーもあるし、一つ一つの音が潰れることもない。その結果、一つの音に集中してもちゃんと描けている。音楽全体がドライに感じる気もするが、音源に入っている情報を余すことなく引き出している。
チック・コリア 『クリスタル・サイレンス』では各楽器の精妙な響きが再現できてるし、パワーがあるので聞いていて気持ちいい。ホイットニー・ヒューストン 『オールウェイズ・ラヴ・ユー』はホイットニーが中心にピタリと定位するので、ステージ全体を見渡すようだ。マイケル・ジャクソン 『スリラー』のようなさまざまな音が散りばめられている音源の場合、小さな音の表現が豊かなせいか、音の洪水に包まれているようで面白い。
おすすめ中華アンプ5選
Lepy LP-2024A+
中華アンプの代名詞ともいえるモデル。中国Bukang Technology社のブランド『Lepy』のアンプ。以前は『Lepai』だったが『Lepy』にブランド名が変更になったようだ。『Lepai』で話題になった以前のモデル『LP-2020』は、Tripath社の『TA2020』というチップを使っていた。 『TA2020』の評判はとても良かったが、残念ながらTripath社は倒産。もはや生産中止となった『LP-2020』にはプレミアがついている。
現行モデル『LP-2024A+』は、ほぼ同じ仕様の後継チップ『TA2024』が使われている。後継機種なので中身も進化しており、他の中華アンプが搭載していない低音・高音の音質調整とトーンダイレクト・ボタンもある。『SA-98E』と同様、やはり音が安定するまで3~5時間位のエージングが必要のようだ。
SMSL SA-98E
低価格が売りの中華アンプ市場のなか、比較的高価な部類に入るのがS.M.S.L社の『SA-98E』。だいたい『LP-2024A+』の3倍の値段がついている。搭載チップはSTマイクロエレクトロニクス社の『TDA7498E』を採用。これは生産中止となった『TA2020』と同じく評判が良いが、Tripath社のICに比べアナログっぽく暖かな音だと評価するひとも多い。このモデルの特徴は80W+80W=160Wという大出力で、大型スピーカーも楽に駆動できる。しかも電力効率は85%に達し発熱はほぼない。この大出力を実現するため、本機には本体よりも大きなACアダプターが付属する。通常そこまでの大出力が必要になることはあまりないが、余裕をもったスペックは音にゆとりがでる。
FX-AUDIO- FX-98E
『FX-AUDIO-』は日本企業ノースフラットジャパン(NFJ)のブランド。つまり厳密には中華アンプとは呼べないが、『SMSL SA-98E』を購入するのなら先に知っておきたいメーカー。私が購入した『SA-98E』は無音時に若干ホワイトノイズが乗る。スピーカーから2mほど離れれば聞こえなくなるほどのレベルではあるが、NFJはそのノイズの原因を特定。NFJの公式ブログに詳しく記載されていた。
SA-98Eのノイズ原因
- 回路のアートワークのベタGND部分でアンプ出力段のゲートスイッチノイズがアナログ段のGNDに影響してSN比が低下している
- 使用しているACアダプタからのリップルノイズを内部の電源平滑コンデンサが十分取り切れていない為に全高調波歪とSN比が低下
- 部品の精度誤差 貼り付けタイプの積層セラミックコンデンサ自体精度差もしくは不良ロット
NFJでは、それらの問題を修正したバージョンとして『FX-98E』を独自販売している。この機種には『SA-98E』の巨大なACアダプターは付属していないが、価格設定はとても良心的。ACアダプターを別途購入する手間があっても『SA-98E』より魅力的だ。日本のメーカーなので保証期間も6ヶ月間と安心だし、より高音質を追求するユーザーならNFJは要チェックだ。
FX-AUDIO- TUBE-01J
『FX-AUDIO-』の大ヒット商品、真空管プリアンプ『TUBE-01J』。プリアンプはそれだけではスピーカーを駆動できないので、『LP-2024A+』や『FX-98E』など他のアンプと組み合わせて使う。『TUBE-01J』を追加すると音はかなり変化する。具体的には音にツヤが出て響きが美しくなる。音の細部にまでパワーが行き渡り、『感情に訴える成分』が増すような感じだ。真空管を一度聴いてみると、元に戻すのは物足りなく感じるはずだ。5,000円前後と低価格な製品ではあるが、オーディオの楽しさ・奥深さが垣間見えて楽しめる。
『TUBE-01J』はどんなアンプと組み合わせても効果を得られるが、同じ『FX-AUDIO-』のアンプと組み合わせることで統一感がでるので、オーディオ製品としての高級感も演出できる。
ELEGIANT Bluetooth アンプ
中華アンプはD級デジタルアンプの高音質が一番の売りだが、それに加えBluetooth接続ができるのがELEGIANTのアンプ。 Bluetoothなので無線、つまりケーブルレスでスマホやPCの音をスピーカーから流せる。高音質でありながら利便性を兼ね備えている。 さらにこのモデルはBluetooth以外にUSB接続とアナログライン入力が可能で至れり尽くせり。アンプ部は50Wx2chと高出力なので大きなスピーカーも駆動できる。この値段とサイズにして本格的なアンプと言ってもよいモデルだ。 さらに各種ケーブル類といった付属品も充実しているので、まさに驚愕のコストパフォーマンス。
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